2024(令和6)年は、浄土宗が開かれて850年という記念すべき年です。日本中の浄土宗では、開祖法然上人への慶讃法要(法然上人や阿弥陀さまの教えを慶び、讃えるための仏事)が営まれます。
ひとつの教え、考え方が、850年もの長きにわたり受け継がれているなんてすごいですよね。そんな浄土宗って一体どんな教えなのでしょうか。
ロック僧・法然
日本仏教にもたくさんの流派・スタイルがあります。
密教という護摩祈祷を行う宗派(天台宗や真言宗)。
坐禅を大事にする宗派(臨済宗や曹洞宗)。
『法華経』という教えを大事にする宗派(日蓮宗)。
そして、「南無阿弥陀仏」の教えを大事にするのが、浄土教として括られる、浄土宗、浄土真宗、時宗、融通念仏宗などです。
飛鳥時代に日本にやってきた仏教ですが、浄土教が一気に花開いたのは平安時代末期から鎌倉時代にかけてです。
これまでの仏教は、貴族や役人など、エリートたちのものでしたが、これを庶民のものにしようと常識破りな活動を展開したのが、何を隠そう法然さんでした。
当時のお坊さんは官僧(国家公務員としての僧侶)でしたが、法然さんはそこからドロップアウトして、自らが信じる教えを民衆に説いていったのです。
そのため、権力や既存の教団から弾圧を受けることとなるのですが、民衆からの圧倒的な支持があり、浄土教はまたたく間に日本仏教の大きな潮流となっていきます。浄土真宗を開いた親鸞は法然の直弟子でしたし、時宗を開いた一遍も、この流れを汲みます。
ちなみに、仏教に造詣が深いことで知られるイラストレーターのみうらじゅんさんは、常識を破った法然上人のことを「ロック」、それをさらに破壊していった親鸞を「パンク」、民衆たちと歌って踊って念仏を説いた一遍をストリートの「ヒップホップ」だとたとえました。とても分かりやすいですね!
南無阿弥陀仏の教えは、本当にスゴイ!
「南無阿弥陀仏」とは、「阿弥陀如来さま、あなたのことをお慕いします」という想いをギュッとひと言にまとめたキャッチコピーのようなもの。
阿弥陀如来さまとは、「どんな人であれ、絶対に、絶対に、あなたのことを救いますよ」とお誓いなさった仏さまです。
そんなありがたい仏さまへのキャッチコピーですから、これを唱え続けているとこのことば自体に大きな力が宿るようになります。
そして、法然上人は、この「南無阿弥陀仏」の念仏を、一心にお唱えなさいよ。と、説かれるわけです。ことばを発することで、心が生じるということなのでしょう。
わたしたちを支えてくれることば
筆者は、「南無阿弥陀仏」は、自分のことばを支えてくれる”ことばのお守り”だと思っています。
しかも、そのお守りは何にだって効力を発揮してくれるのです。
神社とかで販売されているお守りって、「諸願成就」とか、「家内安全」とか、「商売繁盛」とか、いろんな願い別に作られていますよね。
でも、お守りを持ったからと言って、こうした願いがすべて思い通りに叶うわけではありません。
むしろ、こうした願い事を叶えるために心を奮い立たせてがんばる時に、お守りをギュッと握りしめるのではないでしょうか。
あるいは、心が不安で、どうしようもない時、お守りをギュッと握りしめるのではないでしょうか。
そうしたわたしたちの誓い、覚悟、不安、苦しみに寄り添ってくれるお守りのようなことばが、「南無阿弥陀仏」なのではないかと思っています。
亡き人を、必ず極楽浄土に連れて行く
お葬式の時、法事の時、亡き人と向き合う時によく「南無阿弥陀仏」が唱えられるのは、それくらい、死の恐怖、死別の苦しみというものが、大きくて、深いからです。
でも、阿弥陀如来さまは、「わたしのことを信じて、南無阿弥陀仏の念仏をお唱えする人は、必ず極楽浄土にお連れしますよ」と約束してくれています。
それが、嘘か本当かは、ここでは問題ではありません。むしろ、その教えが、わたしたちの心の支えになってくれるかどうかが大事なのではと考えます。
お念仏を唱えたら、亡き人は必ず極楽浄土に行く。この教えは、亡き人にも、そして遺された人にも、大きな支えとなるのではないでしょうか。
2024年は、浄土宗開宗850年
そんな、インド生まれのありがたい教えを、日本人に分かりやすく伝えるために命を懸けて権力と闘い、生き抜いたのが法然上人です。
法然上人が比叡山と決別して、京都・吉水の地に小さな庵を立てた年が、浄土宗開宗の年だとされています。
それから850年。今年は浄土宗のさまざまなお寺で法要が営まれます。
まずはお寺に足を運んでみて、ゆっくりと流れる時間の中で、仏さまの教えや慈悲の心を感じてもらえたらと思います。
京都の知恩院や永観堂、東京だと芝の増上寺、マキノ祭典のお隣・智福寺さまも、浄土宗のお寺なんですよ。
あなたの平穏な日々をお祈りして、南無阿弥陀仏(^人^)
半澤まどか
マキノ祭典 (株)まきの 社員 約2年間で250件の葬儀を担当。現在は終活カウンセラーとして、葬儀の事前相談やセミナー講師を行っています。葬祭ディレクター1級の資格取得に向けて現在勉強中。三度の飯より水辺が好き。