年に2回、春と秋にやって来る「お彼岸」ですが、いったい何のための行事なのか、詳しいことはよく知らないという人も少なくありません。
「お彼岸って、いつからいつまでなの?」
「お供えするものに決まりはあるの?」
「お供えの花はいつもと同じでいいの?」
「お盆との違いは?」
などと疑問に思っているあなたのために、お彼岸とはいったいいつのことなのか、何を行うのかなど、意味や、過ごし方、お供え物についてなどを詳しく解説いたします。
目次
お彼岸はいつ?「春分と秋分を中心にした前後7日間のこと」
お彼岸とはいったい、いつからいつまでのことなのでしょうか。
お彼岸は年に2回あります。「春のお彼岸」と「秋のお彼岸」です。これらはともに、春分と秋分を中心とした前後7日間のことを指します。
お彼岸がいつからいつまでと迷ってしまう方のために、直近の5年だと、春のお彼岸と秋のお彼岸は次の通りです。
<直近の春彼岸と春分の日>
2025年春のお彼岸 3月17日~3月23日(※3月20日が春分の日)
2026年春のお彼岸 3月17日~3月23日(※3月20日が春分の日)
2027年春のお彼岸 3月18日~3月24日(※3月21日が春分の日)
2028年春のお彼岸 3月17日~3月23日(※3月20日が春分の日)
<直近5年の秋彼岸と秋分の日>
2025年秋のお彼岸 9月20日~9月26日(※9月23日が秋分の日)
2026年秋のお彼岸 9月20日~9月26日(※9月23日が秋分の日)
2027年秋のお彼岸 9月20日~9月26日(※9月23日が秋分の日)
2028年秋のお彼岸 9月19日~9月25日(※9月22日が秋分の日)
春分と秋分は年によってズレることがあり、それにあわせてお彼岸の期間もズレます。今年はいつからいつまでがお彼岸かを正確に知りたい場合は、カレンダーを確認しましょう。
お彼岸の意味は?「季節の変わり目をご先祖さまとともに迎える日」
お彼岸にはどのような意味があるのでしょうか。
そこには古来から日本で続く「先祖祭祀」や「自然崇拝」に、外来の仏教的な解釈が加わって、いまのお彼岸の意味が形作られたと思われます。
先祖祭祀と自然崇拝
春分と秋分、ともに太陽が真東からのぼり真西に沈む日として知られます。つまり、この日を境に昼と夜の長さに違いが出てくるのです。それはすなわち、春分は冬から春へ、そして、秋分は夏から秋へと、季節が移ろう境目であることを意味します。
日本人は身の回りの自然を、そしてご先祖さまを大切にする文化を持ちます。まさに季節の境目を祖先と共に感じてきたのでしょう。
春のお彼岸には、長く寒い冬の季節を終えて、温かい春の到来をともに喜びました。
一方、秋のお彼岸では、作物の豊作を祝い、感謝し、と同時に、これからやって来る厳しい冬に備え始める時期でもあります。
お彼岸にお墓参りに行くのは、まさにこうした季節の変わり目による自然環境の変化を、ともにご先祖さまとともに感じ取ろうとする日本人の感性の表れのように思います。
仏教的解釈「六波羅蜜」
お彼岸がいつから始まったのか、確証できる資料はありません。しかし、前の段でご紹介した日本人の古来からの先祖祭祀や自然崇拝の感性に、仏教的な解釈が加わり、いまのお彼岸の意味ができあがります。
仏教には「六波羅蜜」という、善く生きるための修行の実践徳目があります。6つの修業(布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧)を通じて、悟りの境地を目指すのです。
春分の日と秋分の日を含む、お彼岸は7日間ありますが、そのうちの6日間は、この六波羅蜜をひとつずつ実践していくための日と考えられています。
日本全国のお寺では、お彼岸の時期になると彼岸法要が営まれます。あなたもお寺にお参りしてみて、お坊さんの味わい深い話に耳を傾けて、六波羅蜜の一部を実践して、生きることの意味について想いを馳せてみてはいかがでしょうか。
お彼岸とお盆との違いは?
お盆とお彼岸。日本の2大仏教行事と言えます。
お盆もお彼岸も、ともにご先祖様を偲ぶ行事ですが、意味合いやすべきことが若干異なります。
お盆は、その時期になるとわが家にご先祖さまが帰ってくると信じられています。そのため、お盆行事やお盆の準備など、お盆にまつわるしきたりには実にたくさんの事柄があり、それも地域によってさまざまな違いが見られます。
一例を挙げると、精霊棚(お盆用の祭壇)、棚経参り(お盆の僧侶のお参り)、盆提灯、迎え火や送り火、精霊馬(馬や牛をかたどったお供え物)、施餓鬼棚、墓参りなどがあります。また、お盆に行われる盆踊りや花火なども、故人を偲び、先祖を迎え入れるために行われたのが起源だと考えられています。
お盆時期になると日本全国が休暇に入ります。たくさんの人が帰省し、家族や親戚との再会を楽しみます。
それに対してお彼岸は、自然の移り変わりを感じながら自分自身と向き合う期間としての意味合いが強いように感じます。六波羅蜜を実践して、善き行いをしようと考えるくらいですから、社会的な盛り上がりよりも、自身をしっかりと内省するための行事だと言えるかもしれません。
お盆もお彼岸も、ともにご先祖さまと向き合う行事ではあるものの、お彼岸では、お盆ほどのしきたりはなく、お坊さんによる自宅へのお参りも原則的にありません。
お彼岸の準備、お供え物
お彼岸には、どのようなものを準備し、お供えすればよいのでしょうか。
お供え物(おはぎとぼだもち)
お彼岸のお供え物として知られているのが、「おはぎ」または「ぼたもち」です。
それぞれもち米をあんこで包んだ同じ食べ物ですが、どうして呼び名が違いのでしょうか。
春のお彼岸にお供えするものが「ぼたもち」。これは春の花である牡丹からそう呼ばれています。
一方、秋のお彼岸にお供えするのが「おはぎ」。こちらは秋の花である萩からとられています。
日本人が大切にしてきたお米やお餅、そこに朱色で縁起物とされている小豆で作られたあんこで包むことで、仏さまやご先祖さまへの特別なお供え物として定着したものだと思われます。
それ以外には特に決まった準備物やお供え物はありません。みなさんが各々でよいと思ったものをお供えしてあげましょう。
食べ物
お彼岸時期の食べ物も、やはり「おはぎ」「ぼたもち」です。
故人さまやご先祖さまにお供えしたものを同じものを食べることで、ともにいることを感じられます。おはぎやぼたもちを、お供え物としてだけではなく自分たちの食卓に並べる分も合わせて準備して、季節を感じてみてはいかがでしょうか。もちろん、お供えしたものをお下がりとしていただいても構いません。
また、家族そろってご先祖さまを供養し、墓参りをしたあとは、少し豪華な食べ物を食卓に並べることで、お彼岸が楽しいひと時になることでしょう。
彼岸花は供えない
秋のお彼岸の時期に赤くきれいに咲き誇る彼岸花ですが、自宅の仏壇にお供えするのは避けるべきだと言われています。
秋のお彼岸を彩る彼岸花は、一方で毒性でもあります。田畑や墓地のあぜ道などに咲いているのをよく見かけますが、これはまさに昔、田畑や墓地などをさまざまな動物から守るために植えられたという説があるほどです。
そこから転じて、「彼岸花を自宅に供えると火事になる」などと言われ始めたものと思われます。
秋分の日はお墓参りの日
秋のお彼岸の中日である秋分の日は、お墓参りの日だということをご存じでしたか?
『国民の祝日に関する法律』では、秋分の日は「祖先をうやまい、なくなつた人々をしのぶ」ための休日だと定められています。そのことから秋分の日がお墓参りの日に制定されました。
夏の暑いお盆時期の墓参りは大変ですが、秋が涼しくなってきたころのお墓参りは、とてもすがすがしいものがあります。また近頃は、秋のお彼岸前後を「シルバーウィーク」として連休にする傾向もありますので、ぜひこの時期をご先祖さまと向き合う機会にしてほしいものと思います。
ちなみに春のお彼岸の中日である春分の日は「自然をたたえ、生物をいつくしむ」日とされています。故人さまやご先祖さまだけでなく、すべての自然や生き物を大切にしましょうという意味においては、春のお彼岸も秋のお彼岸と通ずるところがあるように思えますね。
先祖供養をすることで、あなた自身も幸せになれる
この記事を読んで頂いて、きっとお彼岸について、その概要、意味、準備すべきものやお供え物、過ごし方について理解できたかと思います。
日本人は自然に敏感な民族です。そしてご先祖さまとともにあることを大切な宗教観としています。春は寒い季節から暖かい季節へ、秋は暑い季節から寒い季節へと、一年の中でもっとも季節が変わる時期です。そんな季節の変わり目であるお彼岸をご先祖さまと共に過ごすことで、きっとあなたの心も満たされることでしょう。
春のお彼岸、秋のお彼岸、ともにお寺やお墓にお参りし、あるいはおうちの仏壇に少し豪