遺影写真が生まれたのは、写真技術が普及した大正時代だと言われています。それまでは、故人さまの生前の姿を飾るという風習そのものがなかったそうです(一部、「供養絵額」と呼ばれる肖像画を飾るところもあったそうです)。
遺影写真は、仏間の鴨居(障子や襖の上部)に並べて掲げるのが基本です。ご先祖さまの遺影が並ぶことにより、故人さまを個別に供養するだけでなく、先祖全体とのつながりを感じられます。
国立民俗歴史博物館の山田慎也教授によると、1年間滞在したイギリスでは、死者のメモリアルなものは置かず、思い出を語ることを重視していたの対して、「アジア圏では遺影や位牌など死者の実存性を示すものを必要とする」のだと、遺影を飾りたがる日本人の特徴を説明します(産経新聞出版『終活読本 ソナエ』2014年冬号)。
山田さんが言うところの「実存性」とはつまり、「故人さまの存在そのもの」と言い換えられます。
昔から「位牌は故人さまそのもの」として大切にされてきましたが、その実存性をよりしっかりと補完するために、生前の姿をずっとその場に留める遺影写真が大切にされてきたのでしょう。
遺影写真の飾り方 4つの方法
それでは具体的に遺影写真をどのように飾るべきか、シーン別にご紹介します。
目次
仏間があって、鴨居がある場合
仏間があるおうちには、鴨居が設えられているのが基本です。その場合、お仏壇に近い方から順番に、古いご先祖さまの遺影を掛けて並べます。額の上部を紐でひっぱり、下部を「額受金具」と「額受布団」で受けます。
和室はあるが、鴨居がない場合
昨今の住宅は、和室こそあるものの鴨居がないケースも少なくありません。このような時には、頭より少し高い位置の壁から吊るす。あるいは壁にひっかけずに小机の上に立てるなどして飾ります。
キャビネサイズだけを飾る
マキノ祭典をはじめとする多くの葬儀社では、大小2つのサイズ(「四切サイズ」と「キャビネサイズ」)の遺影をお客様に手渡すのが基本です。大きいサイズの四切を無理に飾らずに、小さいサイズのキャビネのものだけを気に入った場所に置いても構いません。
遺影を飾らない
そもそも、お葬式の時に作成した遺影写真を、絶対に自宅で飾らなければならない、というわけではありません。「日常空間にはそぐわない」「もっと明るい笑顔の写真を飾りたい」「お葬式の時の辛い気持ちが蘇る」などの理由から、遺影を飾らない人も少なからずいます。
遺影写真 3つの処分方法
中には遺影写真を不要とする人も少なくありません。しかし、先ほど述べてきたように、遺影写真には故人さまの「実存性」が宿っていますし、手を合わせてきた私たちの「想い」や「念」のようなものも込められています。そのため、なんとなくゴミとして処分するのは気が引けるものです。
そこで、遺影の処分には次の3つの方法が挙げられます。
丁寧に包んでゴミに出す
遺影写真は、仏像や位牌などとは異なり、魂やお性根は込められていないとされています。つまり、お坊さんによる宗教儀式なしに処分できるのです。
ただ、一般的なごみと同じようにではなく、「心を込めて丁寧に処分する」、という心構えが大切です。
半紙や風呂敷に包む、塩を振ったりお線香の煙をくゆらせるなど、あなたの心が納得する形で処分することで、心の中の違和感や引っ掛かりが解消されるでしょう。
お寺に引き取ってもらう
「どんなにお性根が入っていないと言っても、やっぱり自分の手で処分するとバチが当たるような気がする」
そう考えてしまうあなたは、お寺に相談してみましょう。目に見えないもの「魂」や「念」に対する畏怖や不安を受け止めて、やわらげてくれるのが、お寺などによる宗教儀礼の役割だからです。
ただし、宗派やお寺によっては、遺影供養を受け付けてくれないこともあります。そんな時はインターネットで検索してみましょう。わずかながらではありますが、遺影の供養やお焚き上げをしているお寺もあるようです。
葬儀社や仏壇店に引き取ってもらう
もうひとつの方法は、遺影を作成してくれた葬儀社にお願いしてみることです。
わたしたちマキノ祭典でも、お葬式のお手伝いの際に遺影を作成します。もしも私たちが作成した遺影写真の処分にお困りであれば、ご遠慮なくお申し付けください。
また、仏壇屋さんも引取処分に応じてくれるかもしれません。
なぜ仏壇屋さんかというと、お仏壇の引越しや処分のタイミングで、遺影の処分を検討している人が少なくないからです。仏壇仏具とあわせて遺影の処分も相談してみることで、まとめて引き取ってくれるかもしれません。
まとめ
遺影写真は、生前の故人さまを思い出させてくれる一番のツールです。日常空間の中で、もっとも納まりのいい場所にお飾りして、日々を一緒に暮らしていきたいものですね。
マキノ祭典のアフターサポート事業部は、さまざまな仏事や供養など、お葬式後のお客様をお支えするためのチームです。葬儀からの信頼関係をもとに、よりきめの細かいサポートやケアができるものと存じます。