墓じまいの補助金制度をまとめました
墓じまいには多額の費用がかかるため、お墓をそのままにしてしまう無縁墓が増え、社会問題化しています。お墓が無縁化しないよう、一部の自治体では補助金制度を採用しているところもあります。墓じまいにはどれくらいの費用がかかるのか。補助金制度とは具体的にどのようなものなのか、詳しく解説いたします。
補助金制度は一部の自治体だけ
墓じまいの補助金とは、地方自治体が墓地の返還を促進する目的で行っている補助金制度です。
墓じまいをするためには、墓石の解体・撤去工事やお骨の改葬(お墓の中の遺骨を永代供養墓などに移す)のために多額の費用がかかります。そのため、不要となった墓石の撤去に踏み切れずにいる人たちとそのまま連絡がつかなくなり、墓石が放置されるいわゆる「お墓の無縁化」が日本全国のあちこちで見られ、行政の悩みの種となっています。
こうした状況を少しでも改善するために、墓じまいにかかる費用に対しての補助金制度があります。
ただし、墓じまいの補助金制度を実施している自治体はごく一部で、自治体が運営する公営霊園に限られます。寺院墓地や民間墓地は運営主体が自治体でないため、補助金の対象外です。
墓じまいの費用相場
墓じまいの費用は、【墓石の解体撤去工事】と【墓じまい後の遺骨の供養料】の、主にふたつに分けられます。
【墓石の解体撤去工事】の費用は、墓地の面積、墓石の量などによってさまざまですが、30万円~300万円と、墓地によって大きな開きがあります。一般論として墓地面積1㎡あたり10万円前後と言われていますが、まずは石材店に見積もりを取ってもらいましょう。
【墓じまい後の遺骨の供養料】は、どのような場所に遺骨を移すかによって費用が異なります。永代供養のための合葬墓などに納める場合は10万円~30万円程度、樹木葬や納骨堂などを利用する場合には30万円~100万円近くの費用がかかります。
東京都の場合
東京都が運営する都立霊園が「施設変更制度」を実施しています。
都立霊園の使用者を対象に、いまあるお墓を墓じまいして都立霊園の「合葬埋蔵施設」に改葬する場合、その施設の使用料が免除されるというものです。
つまり、都立霊園の中のお墓を墓じまいして合葬する場合、合葬にかかる費用は東京都が負担するというものなので、墓じまい工事にかかる費用は施主が負担しなければなりません。
前述した通り、墓じまいには、墓石の解体撤去の費用と、その後の遺骨の供養の費用がかかります。都立霊園のこの制度は、後者の費用に対する補助金制度と言えるでしょう。
千葉県の場合
千葉県の場合、市川市と浦安市の2つの自治体が墓じまいの補助金制度を実施しています。
市川市の場合
千葉県市川市の場合、「墓地使用料の返還」と「原状回復費用の助成」といった形で、墓じまいをする際に二重に補助金が得られます。市川市の墓じまいを促進する補助金制度は、全国の自治体を見渡しても先進的です。
【墓地使用料の返還】
使用許可後、3年以内未使用の場合は、墓地使用料の2分の1が返還されます。それ以外の場合も、墓地使用料の4分の1が返還されるので、墓じまいをする施主には大きな経済的助けとなります。
【原状回復費用の助成】
原状回復とは、要は市から貸付された墓地を、はじめの通り元通りにすることです。墓石を撤去し、墓域を更地化するのにかかる費用に対して補助金が出ます。補助金の金額は墓地によって異なり、7万5千円~44万円と、非常に手厚い墓じまいの補助金制度と言えます。
【市川市霊園合葬式墓地の特例許可】
これは補助金の助成ではありませんが、市川市霊園の利用者に限り、墓じまい後の遺骨の改葬先として、霊園内の合葬式墓地への埋葬を2体まで、公募以外で利用を許可してくれます。
浦安市の場合
千葉県浦安市は、「墓所返還者等支援事業」として2つの取り組みを実施しています。
【合祀室改葬等許可制度】
浦安市墓地公園内にあるお墓に埋蔵されているお骨の改葬先として、同霊園内の合葬式墓地(合祀室)を使用できるというもの。改葬先の使用料(13万7,500円)を負担することなく、利用が可能です。さらに、墓所の返還に伴い、使用者とその配偶者が、将来的に合葬式墓地(合祀室)を利用することを見越して、1人につき35,000円で生前予約できます。
【墓石撤去費等助成制度】
墓じまい工事費用の補助金(補助金額の上限は150,000円)が交付されます。
群馬県太田市の場合
群馬県太田市では、自治体が運営する八王子山公園墓地の無縁墓地対策として、墓地返還に際し、墓じまい工事の費用に対して補助金が出ます。補助金費用は上限20万円です。太田市の墓じまいの補助金金額は、千葉県市川市に次いで高額です。いかに太田市が、自治体としてお墓の無縁化に本気で取り組んでいるかがうかがいしれます。
全国の墓じまいの補助金制度に取り組む自治体
ここまでは、関東地方の自治体の墓じまい補助金制度をご紹介しましたが、全国各地の自治体の事例もご紹介いたします。
大阪府泉大津市の場合
大阪府で墓じまいの補助金制度の取り組んでいるのは、泉大津市です。
市営墓地を返還した場合、使用から15年未満は永代使用料の50/100、30年未満は30/100が還付されます。なお、それを経過した墓地に関しては還付金がありません。
岡山県玉野市の場合
岡山県で墓じまいの補助金制度の取り組んでいるのは、玉野市です。
墓地を返還する際に、次のような条件で使用料が返還されます。
墓地未使用の場合:永代使用料の50%
墓地使用済の場合:永代使用料の10%
ただし、平成28年3月31日以前に使用許可を受けた者(承継許可を含む)が墓地を返還したときは次のとおりになります。
墓地未使用の場合:永代使用料の100%
墓地使用済の場合:永代使用料の50%
【まとめ】墓じまいの補助金制度
いかがでしたでしょうか。
墓じまいには多額の費用がかかり、そのため無縁墓が増加し社会問題となっています。一部の自治体では、この問題に対処するため補助金制度を導入しており、これにより墓石の解体撤去や遺骨の改葬にかかる費用の一部を補助していることがお分かりいただけたかと思います。
しかし、補助金制度は公営霊園に限られ、全国的に見るとまだ一部の自治体に限定されています。また、実際には永代使用料の一部を還付するだけで、補助金と呼べるものではないものも含まれています。
墓じまいの費用相場は幅広く、地域や具体的な条件によって大きく異なりますが、自治体の補助金制度は墓じまいを検討している人々にとって大きなサポートとなるでしょう。