お墓がつなぐ友だちの輪?「墓友」って何?
人生を終えるための準備、いわゆる「終活」は、もはや特別なことではなく、誰もが通る道になりました。
特に50代以上の世代にもなると、「親の介護」や「自分の老後」は、切っても切り離せない大きな問題になりますよね。
「人生100年時代」と言われても、定年退職を迎えた後、急に人間関係が希薄になってしまうという不安。いざ終活を始めようと思っても、家族に負担をかけたくない、かといって誰にも相談できないという孤独を感じている方も多いと聞きます。
そんな現代において、今、あるユニークな形のコミュニティが静かに注目を集めているのをご存知でしょうか。その名も「墓友(はかとも)」です。
一見、物々しい響きに聞こえるかもしれませんが、これは老後の孤独を解消し、終活を前向きに進めるための非常に心強い仲間なんです。
今日は、この「墓友」とは一体何か。そして私たちの老後の生活にどう安心をもたらしてくれるのかを、詳しくご紹介していきましょう。
「墓友」とは?
「墓友」とは文字通り、「お墓」を通じて知り合い、友情を育む人たちのことです。
広い意味では、お墓参りの際にたまたま出会い、あいさつや簡単な情報交換をする関係も含みます。
しかし、今日ここで話題にする「墓友」は、より深い関わりを持つ仲間を指します。
「墓友」とは単なる友人ではない、“互助”を前提としたコミュニティのことなのです。
墓友の始まり
「墓友」は、認定 NPO法人エンディングセンター(以下:EC)が広めたことばです。同組織が運営している町田市の「桜葬墓地」が有名です。
ECは、墓地の運営だけでなく、会員に対してさまざまな終活サービスを提供しています。
- 生前の見守りサービス
- 相続相談や遺言書の作成
- 介護施設への入所、病院への入院サポート
- 死後の電気、ガス、水道、年金の停止や死亡通知
- 葬儀、埋葬、遺品整理など
…などなど、やっていることはまさに家族がすべきとされるもろもろのこと。
ちなみに、「墓友」ということばは2014年に同組織が商標登録しています。
また、「桜葬墓地」を購入した人は、ECの会員になる必要があります。
つまり桜葬墓地を希望する人は、単にお墓の利用権を得るだけでなく、その後の終活サポートやコミュニティへの参加もまとめて契約しているのです。
3つの問題を解決する「墓友」コミュニティ
ECの取り組みは画期的で、3つの社会問題を解決しています。
特にECのような組織がバックアップする形態は、高齢者が抱える深刻な問題を「お墓」を核として一挙に3つ解決してくれます。
1:高齢者のおひとり様問題(孤独の解消と見守り)
最も大きいのは「孤独」の不安です。高齢になり、配偶者と死別したり、子どもが遠方で暮らしていたりすると、日常生活での交流が途絶えがちになります。
墓友コミュニティは、お墓参りや合同行事だけでなく、日常的な趣味や食事会などの活動も行い、「一緒に助け合って生きる仲間」を提供します。
同じお墓を契約しているという安心感のもと、深く、真剣な話題を共有できるため、孤独を強いられる高齢者たちに新しい友情の輪を広げてくれるのです。
また、ECのような団体では、会員に対して生前見守りサービスや入院保障まで提供しています。
2:お墓やお骨の無縁化問題
少子化が進む現代、「あとを見る人がいないお墓の無縁化」「行き場のないお骨の無縁化」が深刻な社会問題となっています。
墓友コミュニティに入ることで、個人のお墓を持たずとも、お墓を共同で利用できます。さらに、あなたが亡くなった後も、残された墓友と組織が連携し、お墓を維持管理してくれます。
つまり、あなたが「無縁仏」になる心配はありませんし、お墓の承継者がいないという悩みを根本から解消してくれるのです。
これは、家族に負担をかけたくないという想いを持つ方にとって、何よりの安心材料となるでしょう。
3:死後の手続き問題
「おひとりさま」の人が亡くなると、故人の死後の手続き(死後事務)をする人がいなくなり、役所の手続きや公共料金の停止などが滞ってしまいます。
ECのような組織は、生前に「死後事務委任契約」を結んでおくことで、この問題を解決します。
これにより、あなた自身が「誰にも迷惑をかけずに逝きたい」という願いを叶えることができるのです。
明るい「墓友」たち
墓友コミュニティではさまざまなサークルが開かれているそうです。
手芸、読書会、コーラス、太極拳、ランチ会、お誕生日会などなど。
東京科学大学の谷山昌子さんによると、「死のタブーを超えた友好関係だからこそ、ほとんどの場面で明るく楽しく死や死後を語り合っている」とのことです。
さらに墓友同士が…
「あちらに行っても楽しくおしゃべりしましょうよ」
「向こう岸でもよろしくね」
…と語り合っている姿は、死に対する恐怖心を克服しているようだと、谷山さんは続けます。綴られています。
お墓は所有から、互助・共有へ
もちろん、こうしたお墓や組織が日本全国にあるわけではありません。
ECの取り組みは画期的で、少しずつ日本中に広がっているというのが実情でしょう。
ただ、日本には昔からお寺という場所がありました。
お寺の檀家はいわば同じ組織のメンバーたち。墓地をお互いに管理しながら、時にお寺に集まって、法要や行事を通じて、地域のコミュニティのきずなを結び付けてきたのです。
こうしたお寺の仕組みを現代に整え直すことで、お寺やお墓を中心とした、死後を約束されたゆるやかなコミュニティを築くことも可能でしょう。
お墓は、一家に一つを所有する時代から、互助、共有する時代へと移ろっていくものと思われます。
これを機に、あなたご自身のお墓や墓友について、考えてみてはいかがでしょうか?
この記事は、谷山昌子さんの「墓友・手元供養・土葬-日本の葬送のいまを支える人たち」(『RITA MAGAZINEN2 死者とテクノロジー』ミシマ社所収)を参考にしています。