「香典辞退」に対する正しい考え方
日毎に寒気が加わる季節となりました。みなさまいかがお過ごしですか?
家族葬が多い昨今ですが、参列に加えて御香典を辞退するおうちも少なくありません。喪主さまからすると、参列者の方々に金銭的な負担をかけたくないという配慮からの対応だと思われます。
一方で、まわりの方々からすると
「とはいっても、御香典をしないと失礼にならないかな」
「辞退しているにも関わらず御香典を用意すると、逆に失礼かな」
「弔意を伝えられなくてモヤモヤする」
…などと、本来すべきことができないことに対して違和感を抱いている人も少なくないようです。
「香典辞退」に対してどのように向き合うべきか、葬儀を出す側と、お香典を用意する側、それぞれの立場に立って考えてみたいと思います。
お香典に込められる2つの意味
お香典には2つの意味があります。ひとつは故人さまへのお供え、もうひとつは喪主さまへの経済的サポートです。
「これで故人さまのお好きだったものを買ってお供えしてください」
「わずかですが、葬儀費用に充ててください」
…といった感じです。
また、お葬式では料理や返礼品のおもてなしをしますから、それらにかかる費用も見越して、参列者はお香典をを包むのが習わしです。
しかし、家族や親族しか招かない家族葬では、そもそも声がかからないと参列のしようがありません。
このような場合において「香典辞退」を、どのように捉えたらいいのでしょうか。
喪主側は、お香典を辞退すべき?
家族葬にした場合、喪主はお香典を受け取るべきなのか、受け取らないべきなのか。香典辞退には、主に次の2つの理由があります。
- 相手の費用負担が申し訳ない
- あとあとのお返しが面倒くさい
こうした気持ちは分からなくもありませんが、お香典は、円滑な人間関係のために行われてきた助け合いの文化ですから、相手からの気持ちを拒むことで、違和感を抱かせてしまうという側面もあります。
また、香典をいただくということは、それがそのまま遺族の収入となり、葬儀にかかる出費の大きな助けにもなります。
家族葬だからといって頑なにすべての気持ち(参列、香典、お供えなど)を拒むのではなく、相手からの気持ちはありがたく受け止めるくらいの柔軟さがある方が、双方にとってよいのではないでしょうか。
香典辞退と言われたら、渡すべきでない?
一方で、まわりの人たちは、喪主や遺族から香典辞退と言われたら、どのように対応すべきなのでしょうか?
基本的には喪主の意向を尊重し、お香典を渡さないのが無難です。無理に渡そうとすると、逆に相手に気を遣わせることになってしまいます。
最近では、家族葬を事後報告するケースも少なくありません。その知らせの中で、特に香典辞退の意向が示されていないのであれば、お悔やみのことばとともに香典を差し出しても問題ありません。その上で、喪主や遺族がどうしても受け取らないというのであれば、無理強いは避けるべきです。
また、お香典に代えて、お供えのお花、お線香、お菓子などを贈るという方法もあります。大切なのは、お金を渡すことでなく、お悔やみやいたわりの気持ちを相手に示すことです。お香典にこだわるのでなく、代わりにこうしたものを贈って弔意を表すのもいいでしょう。
まとめ
人間関係が希薄化しているため、伝統的な贈答文化である御香典のあり方も変わりつつあります。しかし、お香典の根っこには「故人さまのお供えのために」「喪主を支えるために」といった相手を思いやる気持ちが込められています。
小規模の家族葬ですから、お香典を辞退することそのものは構わないですし、周囲の人たちは基本的にその意向を尊重するべきです。ただし葬儀屋さんとしては、お香典は「やさしさ」「助け合い」の文化なんですよということは、知っておいていただきたいものです。