葬儀における焼香のやり方。宗派別に回数や違いを解説
お葬式は大切な人を偲ぶ場であり、故人への敬意を表すためにも正しい作法を学ぶことが重要です。この記事では、宗派別の「焼香」のマナーや作法、回数の違いについて解説していきます。
焼香はお葬式の際に行われる儀式のひとつで、故人への尊敬や感謝の気持ちを込めて行います。しかし、宗派によっては焼香の仕方や回数が違いますので、事前の確認が大切です。
今回は、さまざまな宗派の焼香の作法や回数を紹介し、皆様がお葬式に参列する際に適切なマナーを身に付けられるよう記事にまとめました。どうぞお役立てください。
焼香の意味
仏式のお葬式では必ず焼香をします。焼香には、いったいどんな意味があるのでしょうか。
●香りのお供え
焼香は、香をくべて、香りと煙を出すための所作で、いわば故人さまや仏さまへの「香りのお供え」です。ですから、お線香を立てることと、意味や目的は同じです。
ただし、お葬式にはたくさんの方が参列します。一人一人がお線香を立てていたら、とてもでないですが香炉の中がいっぱいになります。そうした意味からも、お焼香という形をとって、香りのお供えをしてもらうのです。
●空間の浄化
また、お焼香には、空間を清らかにするという意味もあります。特に昔は死は穢れだと捉えられていたので、よい香りが立ち込めることで、場が清められ、心身ともに安心してお葬式に臨むことができるのです。
●宗派別の意味
お焼香には、宗派別に定める意味があります。主に、三宝(仏、法、僧)に供えるという意味になります。こちらはのちほど、宗派別に詳しく解説いたします。
焼香の基本的なやり方
焼香とは、お葬式や法事の際に香を焚いて、その香りを仏や故人に捧げることで、仏教であれば宗派に問わず行われます。
お香の香りは空間を清らかにするものと考えられるだけでなく、お葬式において焼香は、ひとりひとりの弔意を示す意味においても大切な時間です。
香を焚いて香りや煙を出すという意味においてはお線香を立てることと違いはありません。しかし、葬儀ではたくさんの人が集まるため、それぞれがお線香を立てていたら香炉の中に納まらなくなってしまうので、焼香が用いられています。
焼香では、火のついた「香炭」に刻まれた香を落とします。こうすることで、回数に関係なく、香の香りと煙を焚くことができます。
お葬式における焼香の基本的なやり方は、次の通りです。
- 祭壇前に置かれた焼香机の前まで進み出る
- 遺族や親族に一礼する
- 故人に対して一礼する
- 抹香(粉状になったお香)を右手の親指、人差し指、中指の3本でつまむ
- つまんだお香を額のあたりでおしいただき、それを火種に落とす(回数は宗派によって異なります。のちほど詳しく解説)
- 故人に対して合掌。心静かに冥福を祈る
- 遺族や親族に一礼して、席に戻る
この基本的なやり方に加えて、回数が異なったり、額におしいただかなかったりと、宗派によってさまざまな作法の違いがあります。宗派別の焼香方法について、次章から詳しく解説します。
宗派別の焼香の作法の違い
この章では、各宗派の焼香の回数の違い、やり方の違いについて、宗派別にご紹介いたします。
天台宗の回数 1回または3回
天台宗は、伝教大師最澄が開いた宗派です。
天台宗では、特に宗派として焼香の回数は定めていませんが、1回もしくは3回とされています。
ちなみに僧侶の焼香は3回と決まっています。これは、読経の中で3回焼香をするように所作が決められているからです。
3回には、三宝(仏・法・僧)に香を捧げるという意味があります。
真言宗の回数 3回
真言宗は、弘法大師空海が開いた宗派です。
真言宗が宗派として定める焼香の回数は3回です。
真言宗の場合も天台宗と同じく、三宝に敬意を示すための回数とされています。
また、真言宗の合掌は、両手の指を互い違いに組み合わせ、右手の親指が最も自分に近いようにする「金剛合掌」が正式です。右手が仏さま、左手を私たちとして捉え、両者がしっかりと組み合わさることを表しているようです。「金剛」とはダイヤモンドの意味で、真言宗の宗派の開祖である弘法大師空海も「遍照金剛」と呼ばれています。
この時、真言宗で大切とされている言葉である御宝号「南無大師遍照金剛」とお唱えしても構いません。
浄土宗の回数 1回または3回
浄土宗は、法然上人が開いた宗派で、「南無阿弥陀仏」の念仏を大切にします。
浄土宗では、宗派として焼香の回数を定めていません。迷ったときには1回ないし、3回にしましょう。
合掌の際には「南無阿弥陀仏」を称えます。浄土宗では、宗派の教えとして、阿弥陀仏が必ず故人を極楽浄土に往生して下さると考えられているからです。声にしてもいいですし、心の中で念じても構いません。
浄土真宗の回数 西は1回、東は2回
浄土真宗は、親鸞聖人を祖とする宗派です。ちなみに親鸞は浄土宗を開いた法然の弟子でもあります。
浄土真宗は、十の宗派に分かれており、それぞれが焼香の回数を定めています。
代表的な浄土真宗本願寺派(西本願寺)の焼香は1回、真宗大谷派(東本願寺)の焼香は2回です。
浄土真宗の場合、他の宗派で行う「額におしいただく」ことをしません。抹香をつまんだらそのまま火種に落としましょう。
また、浄土宗と同じく、浄土真宗でも合掌の際には、お念仏「南無阿弥陀仏」を称えても構いません。
臨済宗の回数 1回または3回
臨済宗は、栄西禅師が開いた禅宗の一宗派です。
臨済宗では、宗派として特に焼香の回数を定めていません。臨済宗の葬儀に参列して、焼香回数に迷ったときは1回ないし3回にしましょう。
曹洞宗の回数 2回
曹洞宗は、道元禅師が開いた、こちらも禅宗の一派です。
宗派として焼香の回数は2回と定めています。1回目は「主香」、2回目を「従香」と呼びます。
曹洞宗では1回目の焼香を「主香」、2回目の焼香を「従香」と呼びます。
「主香」では、抹香を額に押しいただき、「従香」では額に押しいただかずにそのまま火種に落とします。2回目の従香は、煙が途切れないようにという配慮から行われる焼香だと言われており、曹洞宗ならではの焼香の作法です。
また、1回目を仏や故人に向けて、2回目を自身に向けて、という考え方もあるようです。
日蓮宗 1回または3回
日蓮宗は、日蓮上人によって開かれた宗派です。
日蓮宗では特に宗派として回数を定めていませんが、導師は3回、一般参列者は1回と推奨しています。
この時、日蓮宗が大切としている宗派の言葉である御題目「南無妙法蓮華経」とお唱えしても構いません。
宗派が分からない時の焼香のやり方
宗派が分からない時の回数は1回または3回
お葬式に参列すると、そのお葬式がどの宗派のものなのか、その宗派の焼香の回数が何回かなんて、分からないものです。
そんな時は1回または3回にしておけば、無難です。
参列者が少ない家族葬などでは、時間を込めて3回お焼香をしてもよいですし、参列者が多いお葬式では、司会者が1回焼香を推奨することもあります。
焼香で大切なのは宗派による回数よりも供養の心
ここまでずっと、宗派による焼香の回数の違いについて解説してきましたが、最後に、お葬式の焼香で最も大切なことをお伝えします。
というのも、お葬式で大切なのは、宗派による焼香の回数の違いなどではなく、むしろ故人さまに対する供養の心です。
「宗派に合わせた回数にしなくちゃ」
「そもそも宗派別の回数なんて覚えられない」
「どの宗派のお葬式か分からない」
「焼香のマナー違反だったらどうしよう」
などとあわてなくても大丈夫です。仮にあなたの焼香の回数を宗派のそれと違ったとしても、それをとがめる人は一人もいません。
むしろ、回数などに気がとられて心が伴わないことの方が本末転倒です。もしもお葬式の焼香で回数に迷った時は
- 前の人を参考にして回数を決める
- 時間に余裕がありそうだったら「3回」
- 参列者が多かったら「1回」
…くらいで考えておけばよいでしょう。むしろ、心を込めて焼香することを意識しましょう。
お葬式のマナーや宗派別の作法についてはマキノ祭典へ!
いかがでしたでしょうか。
お葬式ではお焼香の回数にはとどまらず、地域による違いや宗派による違いなど、さまざまな形式やしきたりに配慮しなければなりません。
お葬式のことで分からないこと、疑問に思うことがありましたら、どうぞお気軽にマキノ祭典にご相談下さい。お電話、メール、練馬区内にあるマキノ祭典の各サロンへのご来店などでお待ちしております。