葬儀費用と確定申告について
葬儀費用を控除する方法を探している方へ。葬儀費用は確定申告の控除対象には含まれませんが、相続税の控除対象にできる可能性があります。突然の葬儀で多額の出費を強いられた場合、どのようにして税負担を軽減できるのか悩むのは当然です。本記事では、葬儀費用と確定申告に関する誤解を解き、相続税での控除の活用法を詳しく解説します。また、故人の準確定申告についても触れ、4か月以内に行う必要がある重要な手続きをしっかりサポートします。この情報を知ることで、不安を減らし、賢く税務処理を進めることができます。葬儀後の煩雑な手続きでお困りの方は、ぜひ参考にしてください。
葬儀費用は確定申告の控除対象ではない
葬儀費用は、確定申告で税金が軽くなるような控除の対象にはなりません。その大きな理由の一つは、確定申告で認められている控除には、例えば基本的な生活費や家族の扶養、医療費など、特定のものが定められており、葬儀費用に該当する項目がないからです。
確定申告において所得控除が認められるのは、以下の通りです。
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 障害者控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 医療費控除
- 寄附金控除
- 雑損控除
こうしてみると、葬儀費用が控除の対象でないことがわかります。
葬儀費用は相続税の控除対象にできる
葬儀費用は確定申告の控除の対象ではありませんが、一方で、相続税を申告する上で控除の対象にできます。
たとえば、遺産総額が1000万円あったとして葬儀費用に100万円支払った場合、100万円が控除されて、900万円が相続税の課税対象になるということです。
気を付けなければならないのは、お葬式にかかったすべての費用が相続税の控除の対象になるとは限らないという点です。
国税庁は、「相続財産から控除できる葬式費用」として、次のように分類しています。
葬式費用にできるもの(葬儀代、搬送料、お布施など)
- 火葬や埋葬、納骨に必要な費用
- ご遺体やご遺骨の回送費用
- お通夜など葬式前後で通常欠かせない費用
- 読経料のような葬式でのお寺などへのお礼
- ご遺体の捜索やご遺骨などの運搬費用
葬式費用に含まれないもの(お葬式後の供養や贈答品など)
- 香典返しの費用
- 墓石や墓地の購入代金
- 初七日などの法事のための費用
分類のポイント
相続税の控除対象になるかならないかの違いが意外と分かりづらいと思います。
ポイントは、葬儀という式典や故人さまの弔い(火葬や埋葬)に直接関わるかどうかです。葬儀社に支払う費用、お坊さんへのお布施などは控除の対象となります。
相続税の控除対象になるかどうかは、むしろ「葬式費用に含まれないもの」を見ると分かりやすいでしょう。
香典返しは、お葬式を終えたあとの四十九日法要にあわせて贈るのが基本ですし、墓石や墓地の購入代金や初七日の費用も葬儀とは直接関係がありません。
一方で、「納骨に必要な費用」「ご遺体やご遺骨の回送費用」などは控除対象になるとしており、判断が難しい部分もあります。もしも迷った時は、お近くの税務署や税理士に相談して、葬儀費用の個別の項目に対して相続税の対象なるかどうかを確認してみましょう。
葬儀にかかった経費の領収書は大切に保管を
葬儀費用を相続税の控除にするためには、葬儀にかかった経費の領収書を大切に保管しておきましょう。葬儀社からの領収書はもちろんのこと、移動の際の交通機関の領収書、飲食や宿泊代などもです。これらのうち、どれが控除の対象になるかならないかを、税務署や税理士に相談するとよいでしょう。
故人の準確定申告は4か月以内に
相続が発生した際には、相続税に加えて、故人さまの確定申告の手続きとともに、葬儀にかかった経費の領収書の保管や費用控除の申請についても十分な注意が必要です。通常、所得税は1年間の所得に基づいて、翌年の2月16日から3月15日の間に申告し納税します。
もし故人さまが個人事業主などで生前に確定申告や、さらに葬祭費、香典などの葬儀関連費用の申請を済ませていなかった場合、相続人が代わって確定申告を行い、税金や経費の領収証も合わせて処理しなければなりません。これを「準確定申告」と呼び、期限は相続が始まったことを知った日から4ヶ月以内です。
故人さまの確定申告や納税状況に加え、葬式費用やお布施、法事にかかる領収書といった葬儀関連の証明資料が整っていると全体の手続きがスムーズに進みます。しかし、これらの情報が不明な場合、相続後に速やかに必要な資料を税理士の解説を参考に集め、申請手続きと一緒に適用すべき控除等の計算を行う必要があります。