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【ブログ・井上拓郎】お葬式という儀式が持つ力 | の家族葬・区民葬ならマキノ祭典(株式会社まきの)

ブログ

【ブログ・井上拓郎】お葬式という儀式が持つ力

2025.08.21

こんにちは。マキノ祭典の井上拓郎です。

「儀式は、やっぱり強いな」と思う瞬間があります。

これは、葬儀という仕事に携わってきた中で、何度も感じてきたことです。

儀式の力は、時代がどれだけ変わっても、かたちを変えながらも、たしかに人の心を支えている、そんな実感があります。

仏事にまめだった母と、お寺のあたたかさ

わたしの母は、仏事にとてもまめな人でした。

法事、お盆、お彼岸…。そうした節目をきちんと大切にする姿を、子どもの頃から見て育ちました。

父を10歳のときに亡くしているので、法事などでお坊さんが家に来てくれるのが、子ども心にとても身近なことでした。

菩提寺は、浄土真宗本願寺派のお寺です。関東大震災までは築地にあったのですが、震災後に蒲田へ移転。その移転に大きく貢献したのが、わたしのひいおじいちゃんだったそうです。

ひいおじいちゃんは、普段は「飲む・打つ・買う」ばかりの、典型的なロクデナシだったと聞きます。でも一方で、とても信仰心の篤い人でもあったのだそうです。

震災でお寺が火事になったとき、木造のご本尊を抱えて逃げ出した人がいるのだそうですが、それがなんと、わたしのひいおじいちゃんだったのです。

その行動があってから、井上家はお寺から「ご本尊を守った家」として今も印象が良いのだといいます。なんともありがたいことです。

不思議だなと思うのは、自分が直接会ったこともないひいおじいちゃんのことを、お寺という場を通じて知ることができるということです。

お寺というのは、世代を超えて、人と人とをつなぐ場所であり、そこに、わたしはあたたかみを感じています。

そして、そうした話って、葬儀や法事のような「儀式」の時に語られがちなんですよね。

ちなみに、つい先日、父の三十七回忌を行いました。親戚が集まり、お坊さんがやってきて、そのあとみんなで食事をします。

そこで交わされる近況報告、昔の思い出、そしてわが家のルーツの話…。こうしたものの中に、ことばにはできない大切なものが込められているように感じるのです。

儀式の力は、亡き人への想いの強さ

最近は、冠婚葬祭の儀式がどんどん簡略化されている印象があります。

でも、「お葬式」だけは、いまだにきちんと行いたいと思う人が多い。規模は小さくなっても、「きちんと送りたい」という気持ちは、みなさん強く持っておられるように感じます。

それはきっと、お葬式という儀式が、「亡き人への想い」を可視化する最も強い手段だからです。

たとえば、「宗教者は呼ばなくていい」「無宗教で」とおっしゃる方も少なくありません。

でも、そうした方々も、全く何もしないわけではない。「お別れ会」や「直葬」など、何らかの形で「見送りたい」「けじめをつけたい」という想いを持っています。

「お坊さんは要らない。でも、儀式はしたい」

このような要望をお持ちのお客様に対して、わたしはまずこのように問いかけます。

「お客様は具体的に、無宗教葬の中で何をしたいと思っていますか?」

このように真正面から聞かれると、多くの方が答えに困ります。そう、なんとなくのイメージで「お坊さんはいらない」と思っているものの、じゃあどのような儀式をして故人さまを送り出すべきか、その具体的なイメージはないんです。

そうしたとき、わたしはこう伝えるようにしています。

「伝統的なお葬式って、やっぱり強いんですよ」

仏式であれ神式であれ、宗教儀式というものには、誰もがなんとなく知っている流れというものがあります。

「お葬式には、お坊さんの読経がつきものだよね」

「お葬式では、必ず焼香をするよね」

こうした誰もが理解している共通のイメージを損なわずに実施することが、大きな安心と納得につながるんです。

お葬式を主催する喪主や遺族が、無宗教葬を希望していたとしても、参列された方々は

「あれ、読経はないの?」

「あれ、お焼香はしないの?」

…と、不安になってしまうものです。

「無宗教葬の中でこれをしたい」

「故人の好きだった音楽を演奏する音楽にしたい」

…などの明確なご希望がある場合は、もちろんその想いを大切にします。

でも、もし何も浮かばないなら、まずは伝統的な仏式の流れに任せてみるのも一つの方法だと思っています。

これこそが”誰もが知っている儀式”の強みではないでしょうか。

直葬でも読経が求められる理由

最近では「直葬」といって、通夜や告別式をしない、火葬だけを行うお葬式も増えてきました。

でも、直葬であっても「僧侶の読経をお願いしたい」という声は少なくありません。

それは、儀式が人に与えるけじめの力を、誰もが本能的に知っているからではないでしょうか。

たった数分の読経。でもその響きは、参列者の心に深く届き、「ああ、きちんと送り出してもらえたな」という安堵をもたらします。

読経もまた、立派な儀式なのです。そして儀式とは、けじめであり、祈りであり、想いの表現なのです。

「伝統は、やっぱり強いな」と。わたしは思います。

伝統って、バカにできないんです。

みんなが知っているということ。それは、みんなが安心できるということ。その場に集まった人たちが、それぞれに想いをもって、故人を見送る。そういう「共同体の営み」が、葬儀という儀式には詰まっています。

お客様の希望するイメージと、伝統的儀式の安心感。このバランスを大切にしながら、これからも、ひとつひとつのご葬儀に向き合っていきたいと思っています。