【ブログ・青栁】「ああしておけばよかった」は私で最後にしたい
こんにちは。マキノ祭典の青栁です。
前回のブログで綴ったように、私は、早逝した親友への後悔がきっかけとなって葬儀社を目指すことにしました。
マキノ祭典に入社してからすぐに葬祭部へと配属され、いまはプランナーとしてお客様とお葬式の内容を一つひとつ形作っていく仕事を任されています。
これまでにたくさんのお客様との出会いがありましたが、その中でも強く印象に残っている鈴木さま(仮名)とのエピソードをお話ししようと思います。
残業覚悟の事前相談
2〜3年前のある日、夕方5時過ぎのことでした。マキノ祭典の上石神井本社に、とあるご家族が「お葬式の事前相談をしたい」とのことで飛び込んでこられました。
マキノ祭典の定時は17時30分退社。それ以降は宿直当番がお客様の対応をすることになっています。ただ、その時たまたま人が出払っていて、上司から「あおちゃん、お客様の対応お願いできるかな」と。
この時間からのご相談は残業になりがちで、「あちゃー、どうなるかなあ」と思いつつ相談室へ。そこには、悲壮な顔をされたご主人と息子さんがおられました。
お客様を、仮のお名前として「鈴木さま」といたします。
お話を伺うと、奥様の容体が非常に悪く、もう長くはないとのこと。ご来店されたご主人と息子さんのおふたりは、張り詰めた表情でこうおっしゃいました。
「もしもの時に、ただでさえ何も分からなくてパニックになってしまうのが怖い。だから、女房が生きているうちに、いろいろ決めておきたいんだ」
葬儀の事前相談は、お客様によってその内容もさまざまです。
「葬儀の流れをざっくり知りたい」
「大体の費用や、プランに説明をしてもらいたい」
「おすすめの式場はどこ?」
このように、「知りたい事柄を入口にして、まずはお葬式の概略をふんわり知っていただく」という方が大半です。
ところが鈴木さまは「細かいところもすべて決めておきたい」と、強くご希望されていました。
「これは残業、確定だな……」
どんな時間帯であれ、不安な思いをされているお客様に尽くすのが葬儀社の仕事です。
私は気持ちを切り替えて腹を決め、鈴木さまに安心していただけるよう、一歩踏み込んで丁寧に向き合いました。実際のお葬式本番の打合せとまったく同じ密度で、お葬式の場所、祭壇の形、棺、骨壺の種類に至るまでかなり具体的に決めていったのです。
「これだけのことを決めてれば、いざという時に慌てなくて済むね」というおふたりのお顔に安堵が戻った様子を、いまでもはっきり覚えています。
それからまもなくして、たまたま私が宿直(夜間当番)を担当していた日に、鈴木さまから「奥様が亡くなられた」という一報が入りました。
宿直の日にご連絡をいただけるという不思議なご縁を感じながら、深夜のお迎えからすべてを対応させていただきました。
事前に内容を決めておいたおかげで、お葬式は滞りなく終えることができました。
ご主人から「本当に青栁さんでよかった。妻も喜んでいるよ。俺の時も頼むね」という、何よりあたたかい言葉をかけていただいたのです。
お客様とのつながりに救われる
つい最近のことです。休み明けに出社すると、私のデスクにお客様の引き継ぎ書類が置かれており、ご葬家名に「鈴木さま(青栁リピーター)」と書かれていました。
もしかして、あの鈴木さま?
このたびは、ご主人のお姉様のお葬式。「3年前にお世話になった青栁さんという女性にまた担当してほしい」と、私をご指名してくださったのだそうです。
プランナーとして、これほど嬉しいことはありません。
息子さんのお話によると、最近のご主人は若干認知症が入ってきていて、お耳も少し遠くなっているとのこと。それでも、3年前に担当した私の名前をしっかりと覚えていてくれたのです。
打合せの席で、今回もご主人が「俺の時もまた頼むね」とおっしゃるので、すかさず「鈴木さま、それ3年前も同じこと言ってましたよ!」とお返しすると、沈んでいた控室がワッと大きな笑いに包まれました。
お葬式の席で、笑顔や笑いが出るというのはそんなに珍しいことではないのですが、それも、お客様との信頼関係があってこそです。
実はその頃の私にはいろいろと落ち込むことが続いていて、「もう仕事辞めちゃおっかな」と心が折れそうになっていただけに、お客様が私のことを覚えて下さっている、頼って下さっているということに、心の底から救われました。
「ああ、私はまだこの仕事を辞めちゃダメなんだ。今投げ出したら、鈴木さまに怒られちゃうな」
プランナーを続けていると、時に辛いこともあります。
けれど、こうしてお客様との目に見えない深いご縁や、家族の一員に寄せていただくようなつながりを感じるたびに、「この仕事をしていて本当によかった」と、再び前を向く力をいただけます。
「ああしておけばよかった」は私で最後にしたい
二度目のお葬式を終えたあと、「数ある葬儀社の中で、どうしてマキノ祭典を選んでくださったのですか?」とお尋ねしました。
すると鈴木さまは、はじめてマキノ祭典を訪れてくださったときのことを振り返りました。
「実はあの時、他の葬儀社にもいくつか事前相談に行っていたんだよ。でも、そこでは対応した人が詳しく提案をしてくれなくて、自分たちが欲しかった答えが返ってこなかった。それに対して青栁さんは、俺たちの不安に的確に答えてくれたし、プラスアルファの提案があった。何より、俺たち家族や、病床の女房の話をちゃんと聴いてくれた上で、一緒に考えてくれたからだよ」
その言葉をいただいたとき、私はご主人と息子さんのあの時の張り詰めた表情の理由が、本当の意味で分かったような気がしました。
おふたりは、きっとお葬式に何一つ後悔を残したくなかったのです。だからこそ、事前相談の段階であれほど細かく、熱心に葬儀の段取りを決めようとされていたのです。
それはすべて、奥様を深く愛するがゆえ。お葬式の当日は、事務的な手続きや不安に心を乱されることなく、ただ真っ直ぐに、大切な奥様と向き合う時間にしたかったのだと思います。
お客様の後悔をひとつでも減らすお手伝いができて、そして何より、3年経っても私を指名して頼ってくださったこと、本当にうれしく思います。
あの日、手紙を棺に入れられなかったことを今でも後悔している私を、天国の親友は今、どんな風に見ているでしょうか。
「やぎちゃん、毎日がんばってるね」
きっとそんな風に、時に天国から、時にすぐそばで、私のことを応援してくれているものだと信じています。
お葬式は一度きりです。「ああしておけばよかった」は、私で最後にしたい。
彼女の応援を背に、これからも、お客様が大切な方のお葬式で後悔を残すことのないよう、葬祭プランナーとして心を尽くしていきます。